忘れちゃうようなことはその程度だから大丈夫だよと図鑑のザトウクジラが語りかける。僕は母なるデパートの8階で学校をサボる。トイレへ続く何も無いあの辺りからすでに、冷たいタイルの匂いがする。今が夏でよかった。墨汁の匂いが好きだから、いつでも嗅いでいたいと思って白いTシャツを墨汁に浸したら、病院に連れていかれた。それ以降なんだかおかしくて、それまで本当に僕は全て満ち足りていて、なのにそれ以降なんだかおかしいんです。あの年寄りの英語教師の変な発音が、不快な匂いを伴って僕に絡みつくんです。僕のことを可哀想だと思っている斜視の学級委員長は、アナウンサーになりたいらしい。到底無理だろう、僕はあの子の未来を壊す準備を始めている。あの子のことが好きだから、勝手に幸せになってもらったら困る。ずっと内臓を吐き出しそうだ。聞いてほしい聞いてほしい聞いてほしい、僕の幸せな家族計画を。君にならわかってもらえるってわかるんだ、夢で会ったね。あの子の足をつたっていた秘密を一緒に抱きしめてほしい。僕の未来は約束されているから今日の夕焼けも怖くない。僕が世界をやさしくしたい。手を繋いだことなんて一度もないけれど、僕はとっても上手にできるから。